第11章 MENピグリンブルート目線
「おい、ちょっと待て、こっち来るなよ!」
と俺が言ったのには訳がある。
子連れの夫婦が、買い物カートにクリーパーとラヴェジャーを入れて押して歩いているのが見えたからだ。中にはウーパールーパーやアイアンゴーレムもいる。あのメンツはどう見ても、やつらを戦わせて遊ぶ変な人間たちに違いないと思ったから。
「あ、ママ、このMOBは私知ってるよ!」夫婦の子どもだろう女の子がこちらに近づいてきた。「この子、ピグリンでしょ!」
「違う、ブルートだ!」
と俺が言い返せば、女の子が目を丸くしてこっちを見た。大きな声を出し過ぎただろうか。びっくりしたみたいだ。
「あー、すまん、びっくりさせたなら謝る……」
と言ったところで、人間にMOBの言葉が分かるはずもないか、と。俺はなんとか身振り手振りで敵意がないことを伝えようとすると、女の子が顔を近づけてきた。今度はびっくりした顔ではない。恐らく、好奇心の目。
「お名前はブルートって言うの?」
「……は?」