第10章 おらふくんラヴェジャー目線
さっきから、小さな女の子があっち行ったりこっちに行ったりしていたんやけど。その女の子が僕のところに近づいてきたからびっくりした。
僕のいるところはMOB販売の襲撃者コーナーのところにいる。ヴィンディケーターやピリジャー、エヴォーカーがいるところなんやけど、僕はその中のラヴェジャーってMOBなんよ。体力高くて結構強いんよ?
「わぁ、牛ちゃんみたい!」
あの女の子が僕に話しかけてきた。僕は牛じゃなくてラヴェジャーやよ、と教えてあげると、女の子はきゃっきゃっと笑った。
「へぇ、ラベジャー?」
その発音がちょっと違ったのが面白くて、笑いながら「ええなぁ、その呼び方」って言ったら、女の子はますます笑ってくれたので楽しかった。この女の子と喋るのも悪くないと思った。
「ねぇ、呼び方変えてもいい?」
ひとしきり笑った後に、女の子が聞いてきた。僕は断る理由もなかったので、ええよと答えると、すぐに答えが返ってきた。
「ラベジャーは、おらふくん! お家にいる牛ちゃんとそっくりだから!」
「牛ちゃんと?」
「うん!」
そっか。だから僕のことを、牛ちゃんと呼んだのか。なるほどなぁと呟いていると、笑い方もそっくりだと言うからびっくりした。
「……そういえば、なんで僕の言葉が分かるん?」
「うーん……分かんない!」
人間が僕たちMOBの笑い声を聞き分ける話は聞いたことがなかった。僕なんてラヴェジャーの鳴き声としか言われんのに。不思議なこともあるもんだなぁ。
「四体目のMOBはその子にするのかい?」
「あ、パパ」
女の子が振り向いた先には、背の高い男の人間が立っていた。女の子はその男の人間をパパと呼び、少しお喋りをしたあとにまた僕の方を向いた。
「ね、おらふくん、私の家に来る?」
「ええの?」
「うん!」
女の子はにっこりして頷いた。それは楽しそうでええんやけど、牛ちゃんとケンカになったりしないかなぁ? って聞いてみた。
「大丈夫だよ! みんな仲良しだから!」
「みんな……?」
こうして僕は、女の子のお家に飼われることになった。まさか僕が来る前から十体の他のMOBがいて、さらに僕と一緒にもう三体のMOBが買い物カゴの中にいたなんて、この時は気づかなかったんや。