第8章 ぼんじゅうるウーパールーパー目線
「俺が邪魔だからじゃない?」
それが答えではないと知ってはいたが、どうせこちらの言葉も分からないだろう。俺が適当なことを返すと、タイミングよく女の子が驚いた顔をした。
「そんなことない。こんなにかわいいのに!」
邪魔じゃないもん。女の子は頬を膨らませて横を向く。聞いておいて、なんで勝手に怒ってるんだと思ったが、俺のために怒っている女の子もちょっとかわいらしかった。
「ありがとう。けど仕方ないんだ」
「なんで?」
「もう歳を取ったからさ」
ふぅん。女の子はそう答えてこちらを見ていたが、この話にはあまり興味なさそうだった。そういえばこの子、なんでこのMOB販売店に来たのだろうか。もしかして、自分のウーパールーパーを探しに来たのだろうか?
「ウーパールーパーを飼いに来たの?」
「うーん、まだ考え中!」女の子は楽しそうに話した。「そうだ! 私のところに来る? おうちにもウーパールーパーちゃんがいるんだよ♪」
「ええ……俺のことイジメたりしない?」
「しないよ! エルダーちゃんと仲良しだもん!」
「エルダー……?」
その名前、聞いたことがあるぞ。なんだっけ。とにかく強いMOBだった気もする、と俺が考えている間に、女の子は水槽の向こうで、父親らしき人と話を進めていた。
「パパ、私、このウーパールーパーちゃんを飼いたい!」
ん……?
一瞬聞き間違いかと思ったが、女の子の両親らしき人間たちが店員を呼び始めたので俺は焦った。
「え、何なに、アナタが俺の飼い主ってこと?」
「うん!」女の子はにこりと笑った。「今日からぼんじゅうるって名前だからね!」
「お、おう、分かった……」
だから俺は、この女の子のMOBになった。まさか俺が選ばれるとは思わなかったが、女の子が言ってくれた言葉は本当にありがたいと思ってる。
そっか。俺の色は、きれいなんだな。