第1章 召喚
「言葉が、分かるのか?」
頷くと大きなため息をついて頭を抱えるシロ。
「すまないが…一緒に着いてきてくれるか?」
男が近寄ってきて1歩下がる。人殺しについて行くわけがない。
「つっ…やはり無理か」
拒絶したことがわかったのか男はその場に跪いた。そしてフードを外した。ふわふわな白い髪。上げた顔は片目が眼帯で覆われ獣にやられたのか大きな爪痕が顔に残っていた。痛々しい傷に眉が寄る。
「これは魔王の手先にやられました。他にも沢山の被害が出ています。魔王を討伐する勇者様のパーティーにはどうしても聖女様が必要なのです。どうか私について来てください」
そう言って頭を下げるシロ。しかし彼の白いローブは赤く染っている。私も殺されるんじゃ?でもここでじっとしていても同じ事。意を決して足に力を入れる。
『分かりました。その代わり近づかないでください』
「かしこまりました」
シロは私が立ったことを確認してフードを被り直す。そしてポケットから宝石を取り出した。指で砕くと服についていた血が消えて綺麗になる。じっと見つめていたらシロが私に気づいて砕けた宝石を見せてくれた。
「これには物を綺麗にする魔法が込められています。作者は300年前に若くして亡くなった天才魔法使いソロモン。複製魔法で増産しているんです。沢山あるので1つ差し上げます」
『え?あ、ありがとうございます』
シロはポケットから同じ宝石を出すと手に乗せてくれた。水色の小さな宝石は可愛い。洗濯しなくていいんだ…この世界は便利だなと細いチェーンの部分を腕にグルグルと巻いた。
彼に連れられるまま3人が移動していた隣の部屋へ移動すると中にいた老人たちが驚いて私たちを見た。
「シロ!?なぜマガイ者と一緒なのだ?」
「マガイ者ではありませんでした。言葉が通じるようです」
「な!?…飛んだご無礼を致しました。ささ、こちらへお座りください」
老人は表情を一変させてニコニコと笑顔をうかべ椅子へ誘ってくれる。しかしそれが恐怖でしかない。何も言わないが、私はさっきまで人が死んでいくところを見てたのだ。シロが従っているところを見ると彼らの命令だろう。
「準備が整いました」
後ろに控えていた人が老人に伝えると、運んできた大きな箱を開ける。そこには水晶玉が一つ置かれていた。
「では皆様、只今より審判を下します」
