第2章 初めてのガチャ
『役目って言われても…特にやりたい事とかないし』
「やりたいことがないのか?」
不思議そうに首を傾げる少年に頷く。彼はどこまで知っているのだろう。
『私今さっきこの世界に来たばかりで何も分からないの』
目的もない主人など呆れて見放したくなるに違いない。うまい嘘が思いつかず本当の事を包み隠さず説明した。自分の世界やご飯を食べていてここに来て、殺されかけたこと、加護がないと呆れられてシロと金だけ貰ったこと。
全て話し終えて、黙って聞いていた少年から目を逸らす。きっと彼も呆れて戻りたくなるだろう。
「それは奴が間違ってる」
凛とした自信に満ちた声に少年を見るとサファイアの綺麗な瞳と目があった。
「主人には間違いなくガチャ神様がついてる。それを水晶では測れなかったのだろう。愚かで浅はかな連中だ」
『ガチャ神様って一体何?他の人達は炎とか水とか自然とか、水晶からキラキラ光が出て凄かったんだよ?』
「その三つは八つの魔法神の一つに過ぎない。それらは神と言っても階級は下だ。神の加護が有れば莫大な力を生むが、他の神の魔法は使えない雑魚だ。複数を自在に操れる魔法使いはいくらでもいるし、奴らの方が優秀だ」
『神様って一人じゃないの?』
「沢山いる。だから召喚される異人が多いんだ。ちなみに主人のガチャ神様は再生の神だから最上位になる。なぜ召喚士が気づかなかったかは謎だな…修行が足りないんじゃないか?」
腕を組み考えていた少年はイラついているのか指で腕をトントンと軽く叩いている。主人を無碍に扱われていた事を知り沙斬は怒っていた。
誰かが自分のために怒ってくれる事が嬉しくて口角が上がる。
「主人は笑った方が良いな」
無表情だった少年の頬が緩んだ。中性的で人形の様な顔が優しく温かみのある表情に変わった。顔がブワッと熱くなる。可愛い。声からして男だと分かっていても可愛いのだ。そう思う私は重症なんだと思う。
「俺はこれからもその笑顔を守りたい。だから俺と契約してほしい」
『契約?』
「まだ召喚されただけで俺は主人と繋がっていない。契約すれば俺は主人とずっと一緒にいられる。主人の危険を察知できるし、健康状態もすぐわかる。便利な事づくしだ」
心なしか少年の目がキラキラしていた。真っ直ぐに見上げられてたじろいでしまう。
『わ、私で良いの?』
