第1章 寝言の秘密
「うーん……」
おんりーちゃんはそう唸りながら仰向けからこちら側に寝返りを打っただけだった。目は閉じているが、眉間のシワは寄ったままだ。
本当に寝てるの? と思いながらふと逸らした視線の先に、床に落ちている抱き枕だろうクッションを見つけた。
きっと寝ている間に抱き枕を落として寝づらいのだろう。俺はそう思って抱き枕を拾おうとした時、片腕がぐいっと引かれて思わず肩が飛び上がる。
なんだろうと振り向けば、おんりーちゃんが俺の腕を掴んで寝ている。
「……おんりーちゃん?」
小声で呼びかけても起きる様子はない。離れようと試みるも力が強い。
こんな細い腕からよくそんな強い力が出るものかとも思ったが、見るとおんりーの顔からシワが消えていて驚いた。ぐっすり眠っているように見えた。
仕方ないなぁとおんりーちゃんの顔にかかった前髪を掻き上げてやると、ぽつんと何かを呟いた。
「ぼんさん……」
ん? 俺の名前?
なんでここで俺を呼んだのか分からないが、おんりーちゃんは寝息を立ててよく眠っているみたいだし、寝言としか考えられないのだが。
なんの夢を見ているのやら。
だが、ここで起こすのも可哀想だと思ったので、俺はスマホを取り出してこの場で時間を潰そうと思った。