第2章 かっこいいですよ
「いや、その、どうでもいいんだけどね?」俺は慎重に言葉を選びながら前置きをする。「さっき、俺のことがかっこいいとかなんとかって……」
いや、やっぱ何聞いてるんだ、俺。こんなこと聞くなんて、自惚れているみたいで嫌だ。このあとなんて話を続けたらいいんだ。俺は会話を終わらせようとした。
「やっぱこの話は……」
「かっこいいですよ、ぼんさん」
「……え?」
聞き間違いかと思った。
「かっこいいです。皆も、そう言ってるじゃないですか」
今度は聞き取りやすいように、おんりーはゆっくりとそう言った。
「いやいやいや、何言ってるのよ、おんりーチャン。俺はいつも何もしていないし、おんりーに頼りきりじゃん」
おどけるように俺は言ってみる。いつものことだ。俺はおんりーにネガティブな印象を与えないように気をつけながら明るく言ってみせた。
「そういうところですよ、ぼんさん」
「え、何が?」
何もかっこつけたつもりはなかった。なんならかなりマイナーなこと言ってるし。それとも逆さま言葉なのか? 本当はダサいって言いたいとか。
「ぼんさんより頑張りますね」
そんな俺の心境を知ってか知らずか、おんりーが通話の向こうでクスクス笑ってそう言った。何よ、その言い方、まるで俺が頑張ってないみたいじゃないと言い返すと、おんりーはますます笑って。
まぁいいか。こんな変哲もない会話をおんりーと交わすくらい、平和なことはない、と俺は思うようにした。
「いつもありがとね、おんりーチャン」
俺が改まって言うと、おんりーのちょっと驚いた声が返ってきた。
「なんか変なものでも食べました?」
「なんでそうなるのよ……?」
おしまい