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I'll always be with you【アイナナ千】

第19章 Re:member



その日の千さんの情緒は、とっても不安定だった。
急に泣き出したり、声をかけても反応しなかったり。

「里那も、いつか僕を裏切るのか?」
『裏切らないよ』
「本当か」
『約束する。私はずっと千さんの側にいるね』


そう言ったら、また泣きはじめた。

側にいて欲しいのは、私じゃないんだよね?
お兄ちゃんじゃなくてごめんね。


「僕は、万に呆れられたのかな」
『...』
「今なら何でも言う事聞くのに...こんな置き手紙を残して」


ベッドの横のサイドテーブルを見たら、味気ない手紙が置いてあった。

【千らしく Re:valeらしく 歌える場所を探して欲しい】


お兄ちゃんの文字だった。

やっぱりお兄ちゃんは、千さんのために姿を消したんだ。
そして、千さんに音楽を続けて欲しいんだ。

千さんのボロボロな様子。
もう一度音楽が出来るようになったら、救われるのかな。





次に会った時は、千さんは少し元気だった。

「ご飯、いつもありがとう」
『どういたしまして』

嬉しいことなんて、恐らく百くんのことだけだろう。

「僕と万の音楽は愛されていたんだね」
『そうだよ、私も大好きだよ』
「毎日、全力でそう言われてる気分なんだよ」

千さんがお兄ちゃんがいなくなって以来、初めて少し明るい表情をした気がした。





その次の週は、申し訳なさそうだった。


「里那は、もし僕が音楽を続けると言ったらどうする?」
『応援する!千さんの意思を尊重するよ』

安心した顔をした。

私に許可を取る必要はない。
もしかしたら、私を通してお兄ちゃんに許可を取ってるつもりなのかもしれない。


「僕は、一人じゃ歌えない。もし万以外とRe:valeを続けても失望しない?」


私の本心は、お兄ちゃん以外と組んでる千さんを見るのは正直嫌だった。

でも、お兄ちゃんなら何て言うかな?

あの置き手紙から、答えは分かっている。


『続けてくれるなら嬉しいよ。千さんの音楽が大好きだから』
「そう、ありがと」


千さんは百くんと歌いたいと心の奥底で思ってる。
それが許されるのか、本当に歌えるのか、色んな葛藤の中にいるんだろう。


「僕は、万以外と歌う自分の姿を許せるか分からない」
『千さん、どうか、自分を追い詰めないでね』
「万は許してくれるだろうか...」

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