I'll always be with you【アイナナ千】
第19章 Re:member
百くんが落ち込んだ様子で階段を降りてくる。
『ねえ、百くんだよね?』
「えっ、きみは、確か、バンさんの妹さん...」
『そう。大神里那』
あ!と言って、百くんは嬉しそうな顔した。
「もしかして、バンさんの場所が分かって、ユキさんに伝えにきてくれたんですか?!」
『ごめんね、私もお兄ちゃんの居場所は知らない、です』
百くんは、分かりやすく残念そうな悲しい顔をする。
「そ、そうですか、ごめんなさい...!」
『うん。あの、少し聞いてもいい?』
「な、何ですか?!」
『何のために千さんに会いに来てるの?』
「ユキさんに音楽を、歌を続けて欲しくて!Re:valeをこんな悲しい終わらせ方にしたくないんです!」
百くんは、真っ直ぐに私を見据えて言った。
その目に邪心は感じられなかった。
Re:valeが大好き!という純粋な気持ちが強く伝わってくる。
そして、ユキは音楽を辞めない!と強く信じているようだった。
「里那さんは、そう思いませんか?一番近くで二人をずっときましたよね?」
私は頭を抱えた。
千さんに音楽を続けて、なんて...
『私もRe:valeが大好き。でも、私は歌い続けて欲しいなんて、言えない』
「どうしてですか?」
『アイドルのユキが好き。それ以上に私は折笠千斗が好きで大切なの。今の千さんは、ふとした事で死んでしまいそうで...生きててくれればそれでいい。音楽が千さんにとって大切な事ぐらい分かってる。でも、大切だからこそ、今の千さんが音楽と向き合うのがどれくらい辛い事なのか...』
「里那さん...」
絶望の淵のような千さんの姿。
私はその絶望から救う力はないけれど、どれだけ苦しくても側にいる。
この先10年でも20年でも、もう一度千さんが歩き出せるのを待ってる。
『私には出来ないけど。千さんが楽しく音楽を続けられたら嬉しいし、百くんを応援してる。でも、余りにも千さんを追い詰めるようなら、その時は何をしてでも止めると思う...ごめんね』
「分かりました。ユキさん、誰にも会ってないと思ってたから、少し安心しました。ありがとうございます」
先ほど千さんにしていたように、百くんは深く頭を下げた。