I'll always be with you【アイナナ千】
第19章 Re:member
次の週末も、電車に揺られて、お兄ちゃんの家に向かった。
先週、千さんと会って目が腫れるぐらい泣いた後、一番に思ったことは、千さんの手を離しちゃだめだ!という事だった。
辛くても千さんの側に居たい。
『千さん、ご飯たべてる?これ作ってきたから、冷蔵庫に入れとくね』
「ああ...」
千さんは、力無い返事のみで、精気がなかった。
家に入れてくれるのだけが救いだった。
ベッドに腰掛ける千さんの前に座った。
『私は、お兄ちゃんを絶対に見つけ出すよ』
「...」
『千さんも探してくれる?』
「ああ...僕も万に会いたいよ」
千さんの姿は、何かの弾みで細い糸が切れて、いつでもこの世から消えてしまいそうだった。
どうしたら、生きてくれる?
「里那も、ご飯、殆ど食べてないでしょ」
『えっ、普通に食べてるよ』
「嘘をつくのはやめろ」
『...ごめん』
「君も本当に知らないんだな」
私の食事量は明らかに減っていた。
お兄ちゃんが居なくなったダメージは大きくて、食事は喉を通らなかった。
きっと、千さんも同じだろう。
その次の週末も千さんに会いに行った。
千さんは優しい。
キッチンを見ると、私が作ったご飯は食べてくれてあった。
でも、他に食事をした形跡は全くなくて。
来週は手作りご飯を沢山持ってくることを決心した。
「里那...実は、最近、百くんが会いに来るんだ」
『え?』
「苦しくて、嬉しい」
私に言った感じではなく、独り言のように呟いた。
百くん?
確か、Re:valeファンの男の子だった。
二人から話も聞いた事あるし、手伝いに裏方に入っていたのも見かけたことある。
千さんに何の用事だろう?
千さんはとても繊細な状態である。
邪な感情で千さんに会いにきているのならば遠慮してほしい。
でも、千さんには詳しいことを聞けない。
直接百くんに会って、話をしないと。
次の週末、アパート前に着くと。
「もう一度、歌ってください!!!」
男の人の声が聞こえた。
上の階を見ると、百くんだと思われる後ろ姿。
頭を下げている。
直ぐにドアを閉められて、百くんが取り残されている。
衝撃的な光景だった。
私は百くんと話したくて、アパートの下で彼を待ちぶせた。