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I'll always be with you【アイナナ千】

第19章 Re:member




重苦しい病室の空気。
お兄ちゃんの手を握っていると、温もりがあり、生きている事がわかる。
それだけが、私の心の救いだった。


『早く、目を、さまして...』


私は自他共に認めるお兄ちゃん子だった。
両親よりもお兄ちゃんに懐き、小さい頃はどこに行くにもお兄ちゃんと手を繋いで歩いて居たそう。
両親が離婚してからは、家というよりお兄ちゃんの横が居心地が良くなった。
だからお兄ちゃんが上京後は休みの度にお兄ちゃんの家に入り浸っていた。


今はお兄ちゃんのそばにいたくて、高校も休んで病室に居れるだけいた。



千さんは、明らかに焦っていたし、弱っていた。
病室の前の廊下で泣いている姿も見た。

私も精神的に参っていたし、お互いに声をかけられる状態じゃなかった。




お兄ちゃんが目を醒さないのは、今日で何日目だろう。
今日も私はベッドの傍らで兄の手を握っている。

千さんと両親が何かを言い合っているが、私にはどうでも良かった。


ただ、お兄ちゃんが目を覚ましてくれれば、なんでも良い。


「万里くん...!」

握っていた手にぴくりと力が入る。
お兄ちゃんの顔を見ると、虚ろだけど、目を開けていて、、


その瞬間大きく揺れるベッド。
千さんが、お兄ちゃんに抱きついていて。

私はいつの間にか涙が溢れていた。


モノクロで重苦しく感じていた病室の空気が変わった。
水の中にいたように、潜っていたかのような音が一瞬で鮮明になり、世界が色を取り戻した。



私も千さんも、子供のように泣いていた。
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