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I'll always be with you【アイナナ千】

第12章 お兄ちゃん




昔の私はRe:valeのコンサートが何より大好きだった。
大好きな二人のステージは、世界一かっこいいって本気で思っていた。
裏で寝る間も削って曲を作ってる姿を近くで見てきて、出来た曲が初めてステージで披露される瞬間は、言葉にできない感動があった。
ファンの中で、応援する気持ちが一番大きい自信があった。
二人の夢が、勝手に自分の夢になっていた。



「もしかして、千の告白を断ってるのはそれもあるのか?」
『え、いや、違うけど!お兄ちゃんから、その事を聞かれるのは気まずいよ』
「僕も成人した妹の恋愛事情に突っ込みたくはないんだけどさ...』
『うん?』
「最近、お前のことよく聞かれるんだよ。千とか、百くんとか、壮五くんとかね」
『うっ、、すみません。ご迷惑おかけしてます』


お兄ちゃんは、私がずっと千さんに片想いをしている事は知っている。
なんで私が断っているのか、長年の恋が叶うのに何で?って思っていることだろう。


「千からは話を聞いたけど、里那は昔から考えすぎなんだよ」
『大切すぎて考えずにはいられないよ』
「うまくいかないことばかり考えてたら、何も出来なくなるよ?」
『はあ...愛は既に重いんだけど、存在まで重くなりたくないんだよ!』
「ははっ、重くていいんじゃない?」


ヤケクソに言った言葉を笑わないでほしい。
私が重くなったら、千さんは精神的に息苦しくなる。
それは、絶対避けたい。


「そんな怖がる必要ないと思うよ」
『私は変わるのが怖いよ』
「千はあの頃とは変わったよ?百くんのお陰かな?」
『千さんを信頼してない訳じゃないの。コンサートのこともそうだけど、私だけが取り残されてるだけかもね』


あの日の出来事、お兄ちゃんが居なくなった事。
その事実と深い悲しみはみんなの心の片隅にずっとあるけど。

お兄ちゃんは新しい居場所で幸せを見つけて、
百くんは複雑な気持ちと闘いながら音楽を繋げてくれた。
千さんは百くんと共に悲しみを乗り越えて再スタートした。

私だけ変わってない。
怖がりで臆病な自分を守るため、過去の口約束を盾にしてるだけかも。

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