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I'll always be with you【アイナナ千】

第12章 お兄ちゃん




「例えばの話だけど...」
『ん?』
「里那は、過去のことも何も無ければ、千の告白を受け入れていた?」
『想像しづらいなぁ』
「簡単だよ。6年前に同じ事を千に言われてたら、どうしてた?」
『思いっきり喜んでただろうね』
「じゃあ、里那の止まっている時計もそろそろ進めようか」


え、どうやって...


「Re:valeのコンサートに一緒に行こう」
『いや、二人のコンサートを一度もちゃんと見た事ない申し訳なさはあるけど、それが理由じゃないよ?』
「分かってるよ。でもコンサート見に行けたら、里那は一歩踏み出せるだろう?」


もう一度コンサートを見に行けたら。
それは、これ以上にないくらい嬉しい事だ。
過去に囚われている自分が変わるきっかけになるかもしれない。


『私、見れるかな?』
「もちろん。お兄ちゃんは、もう隣にいるんだから」
『そうだよね...』
「百くんも歌えるようになったし、里那も大丈夫だよ」
『うん、お兄ちゃんありがとう』
「千との関係は里那の時計が進み始めたら、もう一回考えたらいいよ」
『私、ステージに立ってる千さんを見たいよ』



私が、初めて千さんと百くん二人のコンサートを見た時に倒れた。
目を覚ました時、心配そうにこちらを見る千さんを忘れたことはない。
ごめんね。僕が君のお兄ちゃんになるよ、と言ってくれたのだ。
罪悪感や心配からきた千さんなりの優しさの言葉だと思う。

その後、その言葉を取り消したくて、何度か二人のコンサートを見に行ったのだが、毎回同じように体調を崩した。
その度に千さんと百くんが、オーバーなくらい心配してくれるのが申し訳なくて、行くのを諦めた。


『チケットは、お兄ちゃんにお願いしてもいい?私が千さんにチケット欲しいって言ったら絶対に心配かけるから』
「わかったよ」
『ありがとう。久しぶりのコンサート!今からワクワクしてきた!』
「千も百くんもとびっきりかっこいいぞ」
『そっか、お兄ちゃんはもう生Re:vale見てるのか〜!いいなぁ』


不安をかき消すように、全力で楽しみなフリをした。
楽しみと不安は半々。

私の中のアイドルの千さんは、あの日で止まってる。
今の千さんはどんなふうに歌って、踊って、ファンサするのだろう。

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