I'll always be with you【アイナナ千】
第12章 お兄ちゃん
「その可愛いMEZZOの二人が寂しそうに言ってたぞ」
『え、私何かした?!』
「仕事が忙しくてコンサート来れないって、毎回断られる!って」
ああ、それは...
『それは本当に申し訳ない。私だって、環くんの顔が分かりやすく悲しくなるのを見たくはないんだけどね』
「それなら見にくれば良いだろ。1日くらい来れる日あるんじゃないのか?」
『もちろん、仕事の予定は調整すればいくらでも行けるんだけど』
「里那の事だから、ファンの子達に申し訳ないから断ってるんじゃないのか?」
その気持ちもあるけど、全く違う理由がある。
実は、Re:valeのコンサートすら行けてないのだ。
その分、コンサートDVDは毎年購入して何度も見て楽しんでいる。
『お兄ちゃんには言ってなかったんだけど...私コンサート行けなくなっちゃって』
「まさか...」
『うん、そうだよ。あのコンサート以来ね』
お兄ちゃんと私が考えてるのは同じだろう。
あの日のコンサート。
ステージ上で大好きな人の上に照明が落ちてきた、それを庇ったお兄ちゃんが大怪我を負った。
その時は現実が受け入れられなくて、その場に立ち尽くしていた。
『それの半年後ぐらいかな?千さんと百くんのライブ見に行った時に、呼吸困難で倒れたの』
「トラウマか」
『多分ね。その後何回かトライしたんだけど駄目で...千さんに心配をかけちゃうと思って、もう行くのは辞めたの』
「里那、ごめんな」
『謝らないで!お兄ちゃんのせいじゃないし、痛い思いをしたのはお兄ちゃんでしょ?』
「あの時は大変だったけど、今は良い人達に囲まれて素敵な仕事が出来て、幸せだから。里那は、あんなにコンサート好きだったのに...」
『私だって、今幸せだから。大丈夫だよ?』
家族にも居場所を告げずに失踪したお兄ちゃんが、新たな幸せな生き方を送れていたことを心から良かったと思う。
私は千さんのそばにいれて、お兄ちゃんとも再会できて、それだけで幸せなはず...だよね?
ただコンサートに行けないだけ。