I'll always be with you【アイナナ千】
第10章 初詣
「里那さん、もしよければ...この後一緒にお茶でもどうですか?」
『いいけど、大丈夫かなぁ』
私は周りを見渡す。
神社に人は殆どいなくて、記者もここまでは来ないだろう。
でも二人きりでのカフェは不味い。
誰に見られて写真を撮られるか分からない。
アイドリッシュ7とスキャンダルなんて撮られたら、お兄ちゃんに絶対怒られる!
何よりMEZZOの足を引っ張りたくない。
「何がですか?」
『撮られないか、心配で』
「スキャンダルですか...」
『そう。かなり前に千さんと撮られた事あって。Re:valeは有る事無い事記事になってたから、大きい騒ぎにならず大丈夫だったんだけど。壮五くんは絶対良くない!』
壮五くんは困ったように微笑んだ。
「歩いて5分ぐらいの所に、行きつけの個室の喫茶店があるんです。大丈夫だと思うので...駄目、ですか?」
壮五くんがここまで意見を押すことは珍しい。
うーん、これは、壮五くんの気持ちを尊重してあげたい。
『...いいよ!壮五くんの行きつけにも、行ってみたいし』
「いいんですか?有難うございます!」
いつもMEZZOと会う時は、百くんに教えてもらったお店に行くことが多い。
だから壮五くんから行きたいというのは初めてだった。
路地裏を歩いて進むと小さいお洒落な本屋さんが見えてきた。
本屋さんのすぐ隣にある細い階段を上がっていくと、隠れ家的な喫茶店についた。
お店に入るとマスターらしき人がこちらに気づき、奥空いてますよと案内してくれた。
店内は木のテーブルとカウンター席があり、大きい棚には沢山のレコードとCDが並んでいた。
懐かしいような落ち着く感じの雰囲気だ。
洋楽のロックバラードが小さく流れていて、壮五くんが好きそうなお店だなと思った。
「我儘を聞いてくれてありがとうございます」
『良いお店だね!壮五くんが行きつけの理由が分かるよ』
シックなメニュー表を開くと、沢山のコーヒーのメニューが並んでいる。
「里那さん、コーヒー飲めますよね?」
『うん、飲めるよ』
「それなら、ここのコーヒーは本当にどれも美味しいので、おすすめです」
私と壮五くんは、注文したコーヒーを味わいながら、コーヒー談義に花を咲かせた。
環くんがいると話題にならないから、二人の会話という感じがして楽しかった。