I'll always be with you【アイナナ千】
第5章 後の祭り 1000side
里那が僕に怒っている所を見たのは、長い付き合いの中で一度だけ。
まだ万と組んでいた頃の話。
いつも通り万の家でご飯を食べることになり、食材の買い出しに里那と二人で出かけた時だった。
里那はお兄ちゃんっ子で、万が一人暮らしを始めると、週末によく泊まりに来た。
万と同じで音楽が好き。
音楽の話をすると楽しそうにする。
ギターも好きで兄妹仲良くセッションしている時もあった。
でも、決してRe:valeの曲作りには口を出さない。
完成したものを聞いて、凄い!と感想はくれる。
ライブもほぼ毎回観に来てくれた。
家によく一緒にいるのにRe:valeの曲作りや方針の話になると、そっと会話から外れて漫画を読み始めたり、家事をし始めたり、一線を引いてくれていた。
万は里那を可愛がって大切にしていた。
僕も彼女と居るのは喧嘩にもならず気楽で心地良かった。
『夕飯何作ろうか?』
「里那が好きなものでいいんじゃない?」
『その返しが一番困るんだよ〜、お好み焼きでいい?』
「いいよ」
二人でスーパーまでの道を歩いて居た時、曲がり角を左に曲がった時だった。
視界の端に少し見覚えのあるような顔がいた。
「あ!!!!」
凄い大きな女の声だった。
里那も驚いて声の方、後ろに振り向いた。
「千斗!!!」
やっぱり見覚えるのある顔で合っていたのか。
名前は覚えてないが。
高いヒールを履いた女がコツコツとこちらに歩いてくる。
『え、千さん知り合い?どなた?』
小声で戸惑ったように聞いてくる。
「見たことあるけど、知り合いでもない」
『ええ、凄い怒ってこっち来てるけど、、、』
女は僕の目の前まで歩いてくる。
「隣の女は誰?!私と付き合うって言ったじゃない!!!!何で何で!騙したの?!」
またか。
こんな事はもう慣れていて。
「興が削がれた。里那行こう」
「ふざけんなっ!!!!!」
女が思いっきり手を振り上げて、僕が打たれるんだなと思った時、パンッ!と高い殴打音が耳に響いた。
「っ、え、え、、ご、ごめんなさい」
急に慌てふためく女。
里那は僕の前に立っていた。
遅れて気づいた。
里那が叩かれたのか。僕を庇って。