I'll always be with you【アイナナ千】
第5章 後の祭り 1000side
「モモ、里那が壮五くんと楽しそうに話してるけど、仲良かったの知ってる?」
「いや、オレは知らないな〜。バンさんは知ってるんじゃない?」
「おい、万。君の妹の話だ」
「一年前ぐらいから壮五くんと仲良くなったみたいだよ」
万は呆れ顔でこたえる。
一年も前から知り合いとは知らなかった。
随分と壮五くんは里那のことを気に入ってるようだけど、知ってか知らずか里那は近い距離間でお喋りをしている。
その光景を少し目障りに感じながら、モモと他のスタッフの人たちと年末年始の仕事の話などをした。
「ユキ、そんな不機嫌な顔しないで!ほら、これユキ専用プレート料理じゃない?!全部ユキの好物だよ〜、愛がつまってるね!!」
「そうね、里那が作ってるから」
僕のためであろう料理を食べながら里那の様子を伺う。
もう2時間ほど経ったが、ずっと同じ場所で楽しそうにしていた。
「なんで里那はこっちに来ないんだ...」
「里那ちゃん呼んでこようか?呼んだら来ると思うけど」
呼ぶ?
特別この場で話すことはない。
呼ぶ理由はないけど、つまらない。
「そうね、先に二人で帰ることにするよ」
「えええ、ユキ?!」
里那の後ろに来ても、こちらには全く気づいてない様子。
楽しそうな二人を見てると脂っこいもの食べてないのに胸焼けしてくるよ。
「ねえ、何話してるの」
早く離れてほしくて、いつの間にか彼女の腕を掴んでいた。
思ったより余裕ないかも。
でも、彼女が僕の後ろを焦ってついてきてるのが分かって少し安心する。
彼女に、酔ってるの?て聞かれれば、確かに酔ってるかもしれない。
そんなに飲んだつもりはないんだけどね。
酔ってるのを言い訳にして、里那が全て受け止めてくれることを分かっていて、感情のまま言葉を吐き出す。
『家ついたよ、早く降りて』
「里那も降りて」
『折笠千斗。私は今、貴方と一緒にいたくない』
怒ってる?
冷たい声だった。
目が合うが、何を考えてるか掴めない表情。
里那が僕を拒絶するなんて初めてだ。
「分かった」
むしゃくしゃしながら車から降りた。
酔いが一気に覚めたようだった。