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I'll always be with you【アイナナ千】

第22章 先輩な一面




「記憶喪失の役なんですよ」
「へえ、面白いじゃない」
「面白がらないで下さいよ。記憶喪失なんてなったことないし、似てる感覚も分からないから、取り付く島もない」


記憶喪失か...私は演技の事は全く分からないが、確かに難しそうな役だ。


「それで、僕になんの話を聞きにきたの?」
「かなり前に彼女の記憶を無くした純愛ドラマやってましたよね?その時の役作りを聞きたいです」
『あのドラマの千さん良かったよね!』
「僕が恋愛モノなんて、かなり前のドラマじゃない。あんまり覚えてないよ」
『ええっ、あれ感動して泣いたのに...』
「里那とモモが泣きすぎて、最終話の内容が全然入ってこなかったことは覚えてるけどね」


千さんが彼女を全く思い出せない中で、初対面だと思い込みながら、もう一度恋に落ちるストーリーだった。
最終話で全てを思い出すシーンは涙が止まらなかった。


「そもそも僕と君の役作りの仕方は違う」
「千さんは似たタイプだと思ってましたけど」
「大和くんは君自身の経験と照らし合わせて、役の中身から作ってくタイプだろう」
「はい、そうっすね...千さんは?」
「僕は外から作っていく。いつの間にか感情がのっているタイプだ」

役作りにもそんなタイプがあるとは、知らなかった。

「初主演の時の監督に言われたんだ。君はそこにいるだけで雰囲気があるから、君が演じることに意味があるってね。大和くんは、完全に役になりきる演技が出来る。求められてる演技すら違うよ」
「はは、確かに、千さんは画面映えしますからね」
「君が経験をもとに作っていた気持ちを、別の引き出しから持ってこれればいいんだろう?それが出来たら君の演技の幅は広がるよ」
「分かりました、模索してみます...」
「この話は終わりだ」


千さんはフォークにオムレツを少し取り、私の口の前に持ってくる。

え?
何を考えてるんだ。

「里那が、僕たちの真剣な話で食べるタイミング見失って、ずっと待ってるから。ほら、口開けて」

私は、差し出されたフォークを手で奪い取り自分で食べた。


『二階堂さんの前で恥ずかしいって!』
「はは、お熱いのを見せつけられたな〜」
『ご、ごめんなさい!』
「いや、お邪魔しちゃってるんで」
「大和くんにはいないのかい?」
「いませんよ!生憎、メンバーの世話で手一杯です」

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