第14章 老人と騒動
囚人たちが並び終えると、列を乱すなと言われながらどこかへと向かった。そこは大きな木のテーブルが並んでいるところで、壁にはずらりと様々な道具が立て掛けられていた。
「今日は木材でスプーンとフォークを作ってもらう……」
と看守が説明したところ、どうやら囚人たちにスプーンとフォークを作らせるらしい。それを囚人たちにやらせる理由なんてネコおじには到底理解出来なかったが、どうやらドズルたちとはバラバラの席にいるらしく、どうしたらいいのかおらふくんも分からないみたいだ。
ネコおじはするりとおらふくんの服の下を滑り込んで足元へ下りた。おらふくんが止めに入ろうとしたが、看守によそ見はするなと言われ、手を引っ込める。
その隙にネコおじは匂いでドズルの足元まで近づくと、隣の席はあのヒゲの老人が座っていて、このように会話をしていた。
「……どうして僕たちを助けてくれたんです?」
「お前さんたちが、かつてのワシみたいだったからじゃよ」
看守にあんなに食ってかかっていた面倒くさそうな老人とは思えない程、穏やかに静かな声だった。看守にバレない話し方を心得ているみたいだ。
次にネコおじはぼんのところへ向かったが、足元にすり寄ろうとした瞬間蹴られたので近づくのは諦めた。ぼんは鈍感だから、足元にネコおじがいたことに気づかなかったのだろう。
それからMENの足元に近づくと、ネコおじに気づいたみたいで机の下で指を振った。撫でてくれる合図だと思い込んだネコおじがMENの指先の上に顎を乗せると心地よく撫でてくれたのち、もう片方の手でポケットから何かを取り出した。赤いアイテムだ。
ネコおじはそれがMENの好きな武器……否、兵器と呼ばれるTNTであることを知っていた。MENはこちらに一瞥もせずにTNTを差し出したので、ネコおじはそれを咥えて走り出した。
MENが何を言いたいのか、ネコおじはなんとなく察していた。看守もまさか猫が居るなんて思わなかったみたいで、簡単に作業場から抜け出すことが出来た。
そして適当な場所で思いっきり引っ掻いてやってネコおじは一目散に逃げる。シュッという小さな音が後ろの方で聞こえた。あとはお約束通り、爆発するだけだ。