第1章 過去、そして出逢いへ
「そうか…それは辛かったな。
…ところで嬢ちゃんの個性は何だ?」
そっと栗色のふわふわの髪を撫でるように
頭に触れながら問う義爛。
『わたし、けがなおせるの。
でもじぶんのけがはなおせない…。
おかあさんいつも、あまりひとまえで
つかっちゃだめだっていってた』
彼女の言葉に大きく目を見開く義爛。
回復系個性の治癒。
めったにお目にかかれない珍しい個性。
普段ならこんな小さな子どもは無視して通り過ぎるだけなのに、思わず勝手に自分の口が動いて話しかけていた行動に疑問に思っていたが、ストンッ…と腑に落ちたように納得した。
「回復系の治癒個性か。
そりゃあ、お母さんも無闇やたらと
見せびらかしちゃいけねぇと言う訳だ」
『ちゆ、こせい…?』
義爛の言葉に不思議そうにコテンと首を傾げる。
「そう、嬢ちゃんの個性は“ 治癒 ”って言うんだ。
これは珍しい個性だからな。
きっと嬢ちゃんの両親はこの珍しい治癒個性を
悪いヤツらから守るために
そう言ってたんだろよ」
『おとうさんとおかあさんが
まもってくれていた…』
「そう、だからこの個性は大事にしなきゃ
いけねぇ。わかったか?」
『うんっ…。』
両手の平をじっと見つめる。
「そうだ、。
お前、一緒に俺と来ないか?
ここで会ったも何かの縁。
頼る身寄りもないんだろう?
俺が面倒見てやるよ」
義爛の言葉に大きく見開かれるまん丸な瞳。
さっき出会ったばかりの男に着いて行って良いものかと幼心に思い悩むも、本当に頼る身寄りもなく、このままでは遅かれ早かれのたれ死んでしまうだけだと思い、差し出された義爛の手をそっと握り返した…。
この出逢いが後に、に大きな影響を与え、
そしてかけがえのない大切な人との出逢いに
繋がっていくのであった。