第3章 日常、それぞれの想い(♡)
『こんな所に公園なんてあったんだね?』
「町はずれのこんなちっちぇえ公園なんか
誰も来ねェだろ。」
その言葉通り、私たち二人以外人ひとりっ子としていなかった。
弔くんは真っ直ぐにベンチへと向かうとドカ、と座り、私もその隣へ腰を下ろした。
小さな公園のわりには手入れはしっかりされていて、周りには木々も多く生えていてちょうど木陰が日陰になっていて、夕暮れ時というのもあって照りつくような暑さはだいぶマシになっていた。
たまに吹く風が少し心地良かった。
『…風が気持ちいねぇー…っ。』
「…あぁ。」
サワサワサワ……と葉っぱが揺れる音だけが私たちを包み込む。
ふと横を見れば、ほんのり赤みがかった夕空を見上げている弔くんの横顔が思いの外近くにあって少し驚くが、その整った横顔から目が離せなくてじーっと見つめてしまう。
「…なに?」
『ぁ…いや、…弔くんって綺麗な顔してるよね?』
「はぁ?どこが…っ、こんなカサカサの顔…っ。」
『そんな事ないよ!弔くんの顔、綺麗だよ…。』
ビュッ…と風が強く吹いたと同時に弔くんが被ってた黒のパーカーのフードが脱げるとその素顔にそっと手を添えて触れる。
『こんなに綺麗でカッコよく産んでくれた
お母さんに感謝だね…。』
「…母親の顔なんか覚えてねェ。
家族の事も…何もかも…忘れた。」
『…ぁっ、ごめんなさい…私、軽率に…っ。』
弔くんの言葉に…紅い瞳を伏せてどこか虚な弔くんの表情に無神経な事を言ってしまったかと思い慌てて謝る。
確かに今まで、弔くんの生い立ちやどうしてヴィランになってしまったかなどそんな経緯を聞いた事もなかったし、弔くんどころが敵連合のみんなの事を深く知っているわけではない。
でもそうならざる得ない環境を作ってしまったこの世の中がいけないんだ…と思ってしまう。
ヴィランだからといって、皆がみんな、悪い人達だけじゃない。
「は…お前だけはずっと、
俺の側にいてくれるよな…っ。」
ふと紡がれた弔くんの弱々しい声に顔を上げると、紅い瞳が真っ直ぐに私を射抜くように見つめる。