第3章 日常、それぞれの想い(♡)
ぷるぷる震える腕の後ろからスッ…と長い腕が伸びてくると簡単にお目当ての調味料を手に取られ背後を振り向くと、弔くんが至近距離で立っていた。
「…ん、ほら、コレだろ?」
『うん、それ…ありがとう弔くん。』
「はチビだなァー…っ。」
『ち、ちび…っ!?』
「ま、このチビっこいところも
可愛いんだけどな。」
取った調味料をカゴに入れると麦わら帽子の上からポン、と軽く頭を撫でられながら言う弔くんの言葉に頬をほんのり赤らめてしまう。
「ほら、トロトロしてっと日が暮れるぞ。」
そう言えば今度は弔くんが人差し指だけを浮かして私の手首を掴んで歩き出す。
他の食材も無事に選び終わり、レジへと並ぶ。
弔くんが会計を済ませるのを静かに横で待つ。
(お金はきっと黒霧さんから預かってきたもの…。)
買い物袋を指に引っ提げるとまた私に左手の薬指と小指を差し出す弔くん。
それを右手できゅっと握ると満足そうに紅い瞳を細めて笑う。
滅多に笑わない弔くんのこの顔に私は弱い…。
「…たまにはこうして二人で
出掛けるのも悪くねェな。」
『うん、そうだね。
私も弔くんとお出掛けできて楽しかった!』
「…ん、俺も。」
少し日が傾き始めた夕暮れの静かな道を二人で手を繋いで歩く。
私の歩幅に合わせて歩いてくれるところや、買い物袋を率先して持ってくれるところ…敵連合のみんながいてるとあまり笑わない弔くんが二人きりだと意外と優しく笑うところ…。
そんな色んな弔くんを知れた事を嬉しく思うと同時に小さくときめく胸の奥がくすぐったく感じる…。
「…ちょっと遠回りして帰ろうぜ。
もっとお前と二人でいたい。」
紅い瞳を細めてコテン…と小首を傾げて、低くて甘い声で言われれば何度も小さく頷く事しかできなかった。
しばらくすると住宅街からずいぶん離れた町はずれの小さな公園へと到着した。
遊具もすべり台とブランコが一つずつしかなく、あとはベンチがぽつんとあるような本当に小さな公園。