第8章 超常解放戦線
どれくらい時間が経ったのか…、ふいに身体を揺すられるのに気付けばゆっくりと閉じていた瞳を開ける。
『…っ…弔くん、起きた?』
ひょこ、と顔を覗かせるの声にだんだんと意識がはっきりとしてきた。
「…あぁ、悪りィ…寝てた。」
『ううん!
…やっぱり弔くん、身体もまだ万全じゃないし
あんまり無理しないでね?』
また後ろにまわるとすっかりドライヤーで乾いた俺の髪を、頭を撫でるようにゆっくりとゆっくりと手櫛でときながらが心配そうに言う。
「…ん、大丈夫だ。
こんな事でへたってられねェ。」
『少し治癒治療する…?』
「いや、いい。…がぶっ倒れンぞ。」
『でも少しくらいなら大丈夫だから…。
ね?…だめ、とむらくん…?』
くりっとした大きな瞳を上目で見つめながら、親指と人差し指と中指が欠損した俺の左手をキュッ、と優しく握りながら可愛く小首を傾げる。
「…じゃあ、少しだけだかンな?
個性使いすぎるなよ、わかったか?」
『うん!わかった!
…じゃあ、治療するね?』
俺が良いと言えば、ぱぁっと表情を明るくして俺の足元に両膝を付いて座れば、まずは3本の指が欠損した左手にの小さな両手をかざされるとふんわりと柔らかな光が俺の左手を包み込む。
の治癒個性は怪我の大きさに伴って自身にかかる負担も大きくなる。
だから俺はあまり無理にの治癒個性を使いたくない。
コンプレスが八斎會の時に負った大怪我の時も、が治癒を酷使した為に気を失うところまでいってしまったのを見てから俺は気が気ではない。
だから今回の俺の状態を見た時もは迷わず治癒を使おうとしたが、俺が止めた。
またにあんな負担を掛けちまうのなら、こんな怪我我慢できる。
でもは納得できないみたいで、それならば無理のない程度で少しずつなら良いと言ってある。
そのおかげもあってか、だいぶ怪我の状態も良くなり回復しつつはある。
でもあれだけの大怪我だ。生きてるのも奇跡に近い状態だったため、まだ全快に万全ではない。
そんな俺の様子を間近で見ているは心配でたまらないンだろうな…。