第8章 超常解放戦線
『それにしても…真っ白になっちゃったね。』
「…ん?……あぁ……コレ?」
私の言葉に紅い瞳を視線だけ寄越す弔くん。
真っ白になった弔くんの鎖骨あたりまで伸びた長い髪。
泥花市の戦いで個性の解放と共に薄水色だった髪が真っ白になってしまった弔くん。
「…は嫌か…?…俺のこの髪色……」
『ううん!……とっても綺麗…。
陽にあたるとキラキラ輝いていて……
弔くんに似合ってるよ!』
シャワーを止めて、綺麗に泡が流れて水気を含んだ白い髪を軽く絞りながら、瞳を細めてふんわり微笑むとふいに片手が伸びてきて後頭部を抱き込まれるとチュッ…と小さなリップ音を立てて柔らかな感触が唇に触れる。
『…と…とむら、くん…ッ…///』
「お前がそう言うなら…この色も悪くねェな。」
…ん、と左手の親指から中指にはめられた義指の手を伸ばされると小さな手で握り持ち上げる。
すると、ザバァ…とバスタブから弔くんが上がり。
慌ててバスローブをその身体に掛ける。
「…何照れてんだよ。こんなの見慣れてるだろ?」
バスローブの紐を前でキュッと結びながら紅い瞳を細めて悪戯そうに笑う弔くん。
『み!見慣れてない…よぉ…///』
「はは…可愛いヤツ。」
頬を真っ赤に染める私を楽しそうに笑いながら頭を撫でる弔くんに今度は私がぷくぅーと頬を膨らませる。
「…、髪拭いて?」
『ぁ、うん…。』
バスルームに隣接するお部屋のイスにだらーんと脚を放り出して座る弔くん。
タオルを持ってイスに座る弔くんの後ろに立つとゆっくりとその真っ白な髪にタオルを被せると優しく拭う。
『…甘えんぼだね、弔くん…。』
「…コンプレスがお前の事返せって
うるせーからな。
独り占めできる時に目一杯、
を堪能しねェーとな?」
『ふふっ…何それ〜…。』
「…たまにはイイだろ?」
『…ん、いいよ。
弔くんは今じゃもう私たちだけの
弔くんじゃないもんね…。
この何十万人をも束ねる指導者だもんね…。』
「…なに、寂しいの?」
『…ぅん。……だって…きっと、
もっと…今よりも忙しくなって…
こうしてゆっくり気軽に弔くんに
会えなくなっちゃうかもしれないから…っ。』
瞳を伏せながらポツリ、ポツリ…と小さく呟く。