第7章 囚われのお姫様
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タワー内の部屋の外がだんだんと騒がしくなってきた。
さっきまでいたリ・デストロや幹部たち数人も部屋を出ていき、今はこの部屋には私と義爛おじさま、そして一人の少年だけになった。
「……………ん。」
ふと口元にスープを掬ったスプーンを差し出され、目の前に立つ彼を見上げる。
水色のフードの付いたロングコートを着て、肩につくくらいの長さの透き通るような白髪に同じ色をした長いまつ毛を縁取る瞳も綺麗な水色をした儚げな少年。
『…ぁ…貴方は…?』
「…僕は外典。
リ・デストロに頼まれて君に食事を…。」
『…ぃ、いらなぃ…っ。』
「…別に僕は君をどうこうするつもりはない。
だから食べてくれ。顔色も悪い。
ろくにまともな食事を取ってなかったのだろ?」
『…でも…っ…。』
「…いいから。早く、………ん。」
有無を言わさぬ雰囲気の彼に大人しく口を開けると少し遠慮気味にスープを飲む。
『…ぁ…おいしい…。』
丁度良い温かさの口に広がる美味しいスープの味に少しホ…っとする。
「…当たり前だ。
専属シェフが作ったスープだからな。」
フッ…と小さく笑う彼の顔が年相応に見え、瞳を丸くして見つめる。
「…な…何だよ。」
『…ううん。
どうして人質の私に良くしてくれるの?』
「さっきも言ったろ。
僕は君をどうこうするつもりはないと…。
それに君は…大切なお姫様らしいから…
丁重に扱えとリ・デストロが仰ってた。」
『…そう…なんだ…っ。』
タワーから離れた場所からドドーーンッ!!と凄まじい爆発音と煙が所々に上がっているのが、全面ガラス張りの大きな窓から見える。
するとバタバタと慌ただしい足音と共にバン!!とリ・デストロが室内へ入ってきた。
「…外典、始まった。所定の場所へ。」
「はい、リ・デストロ。」
二人のやり取りを静かに見つめていれば、外典が素早く退室していく。
『(…何が始まったの…?
もしかして…圧紘さん達がここへ…?
さっきのあの音と煙は…。
みんな…お願い、どうか無事で……
……圧紘さん…っ。)』
不安気に瞳を揺らし、遠く離れた煙が立ち上がる方向をじっと祈るように見つめるだった。