第6章 突然の別れ(♡)
『…だって……圧紘さんの左腕が…ッ……』
「………ん。」
『……たくさんマジック見せてくれた…ッ……』
「………ん。」
『…大事な…ッ…、圧紘さんにとって…
命みたいに…大事な腕なのに……ッ…。』
「………ん。」
『…髪も…いっぱい撫でてくれた……
……指先も…ッ…、』
「………ん。」
『…寝る時に…いつも差し出してくれてた…、
……左腕も…ッ…』
「………ん。」
『……もぅ…ないなんてッ……、こんな事…っ。』
私が泣いても圧紘さんのなくなった左腕は元になんて戻らないのに…っ。
あとから後から……涙が溢れ出して止まらない…。
本当は私なんかよりもずっとずっと心も、今まであったはずの身体の一部がなくなった身体も痛いはずなのに…。
私が声を詰まらせて言う言葉一つひとつに、穏やかな優しい声でちゃんと応えてくれる圧紘さん。
「…もうそんなに泣かないで?
ちゃんが泣いちゃうと
おじさん困っちゃうからさァ…。ね?
それにほら、ちゃんのおかげで
傷口も綺麗に塞がってたみたいで手術も
いらなかったみたいだし、
痛みも今は全然感じないしさ!」
圧紘さんの右手の親指で涙を拭われると困ったように短い眉を下げてコテン、と首を傾げる圧紘さん。
そして私を元気付けるように明るい声で言えば、包帯で巻かれた左腕の付け根をピョコピョコ動かして見せる。
それでも私の頑固な涙は止まる事をまるで知らないかのように次から次へと溢れ出して、ポロポロとこぼしていく。
そんな私の様子に困ったように右手でガシガシとふわふわのくせっ毛の髪を掻くと右腕でぎゅっと力強く抱きしめてくれる圧紘さん。
「…心配かけて悪かった。
ちゃんにも辛れェ思いさせちまって…。」
圧紘さんが抱きしめてくれた事でやっと、止まらなかった涙がようやく止まりだした。
そして圧紘さんに縋るように病院着の胸元をぎゅっと握りしめながら身を寄せると、圧紘さんの存在を確かめるように何度も胸元に顔を擦り寄せる。
ふわ…っと胸元から圧紘さんの匂いがすると、今ここにちゃんと圧紘さんがいるという安心からまた瞳が潤み出すと肩を震わせて隠すようにまた胸元に顔を埋める。