第4章 初任務(♡)
「…おい、何ニヤけてンだ。」
『ぁ…えと、その…嬉しい、な…って。
こんなにみんなから、
大切に想われてるって知れて…。』
紅い瞳を怪訝そうに細めながら言う弔くんとは反対に、私の顔は嬉しくってだらしなく緩みきってるんだろうな。
それを隠す事なく、素直に言えばふにゃり、と柔らかく微笑む。
そんな私に弔くんは“ バァーカ ”と私の頭を人差し指で小突くと、ふ…っとそっぽを向いてしまった。
薄水色のハーフアップをした髪から覗く弔くんの耳がほんのり赤く染まっていた。
その事に気付き、ふふ…と笑うとまた弔くんが“ 笑うな…っ。”と小突いてくる。
「素直に喜んで可愛いじゃないの。
ねぇ〜ちゃん。」
弔くんに小突かれた頭を今度は圧紘さんがなでなでと優しく撫でてくれれば、小首を傾げて私に微笑む。
そんな圧紘さんにまた嬉しくなるとふにぁ…と表情が緩む。
「ほんとはリーダーも嬉しいンだろ?
…素直じゃねェなァ〜…。」
耳を赤く染める弔くんがよっぽど面白かったのか、クツクツと楽しそうに蒼い瞳を細めて笑う荼毘さん。
荼毘さんの言葉にまた弔くんが反論して、いつものケンカが始まるも、その日常的な光景に平和を感じると瞳を細めてふんわりと微笑む。
「…なァに、ちゃん?
死柄木と荼毘のケンカ見て笑ってンの?」
『…いぇ、なんか平和だなぁ〜と思いまして。』
「え、コレが!?
いつ、蒼炎が出て崩壊が始まるかわかんない
ケンカが…?」
『いつもの日常が戻ったみたいで安心します。』
「コレが平和に見えるなんてちゃんも
コッチ側になってきたなァ〜。」
『はい、私はもう皆さんと同じヴィランです!』
「…ちゃん、それ嬉々として
言う事じゃないよ…。
おじさん、ちょっと複雑だわ…っ。」
圧紘さんの言葉にまたふふ、と笑う私に、短い眉を下げて苦笑いする圧紘さん。
その側でまだ騒がしく言い合いをしている弔くんと荼毘さんを見て、圧紘さんと目を合わせてもう一度小さく笑い合う。
こんな小さな事でも幸せを感じられるのは、この平和な日常がいつ、どこで何が起こるかわからないヒーローに追われる身であるヴィランだから…っ。
小さな幸せを大切にしたいと思ってしまう。