第2章 紀州仇討ち編
にの江「何だってそんな……いくら何でもそんな事思わないだろぅよ、翔吾さんは…」
お智「じゃあ、何故私が寝た後毎日コッソリ寝床を抜け出して何処かへ行くのですかっ!!////」
にの江「は…?」
お智「…………私にややが出来て………悪阻でろくにお相手が出来なくなってから……
……翔吾さん、毎晩何処かへ出掛けてるんです////」
にの江「そりゃ、また……」
お智「今日だって、私はまだ眠くないって言っているのに、体の為に早く休んだ方が良いって私を寝床に押し込んで…
…その後、またお出かけになって…」
にの江「何処へ行っているのか訊かないのかぃ?」
お智「訊きました……でも、ちょっと野暮用がとか、ハッキリ理由を言わないのです…
…その上、帰って来ると妙に疲れた顔をしていて…
…まるで、体を動かして来た後みたいに、汗だくで…////」
にの江「…………」
お智ちゃんはそこまで話すと、俯いて着物の袖を弄りながら
ポロポロと涙を零した
お智「…………私、翔吾さんに見捨てられたら…………もぅ、生きて行かれなぃ////」
にの江「お智ちゃん!!」
雅吉「浮気はしてねぇだろうけどょ」
そこまで、呑気にお茶を啜って話しを聞いていた雅吉が
湯呑みを卓袱台の上に乗せて真顔を作った
雅吉「身重の女房にこんな気苦労をさせるたぁ頂けねぇな」
お智「雅吉さん…///」
雅吉「どれ」
雅吉は、涙を流し続けるお智ちゃんに、にっこりと微笑むと
立ち上がって延びをした
雅吉「此処は一つ、遊び人の雅吉兄さんに任しておきな!」
にの江「ちょいとお待ちよ、あたしも一緒に……」
雅吉「お前はお智ちゃんに付いていてやんな
なぁに、すぐに不届き者の尻尾を捕まえてやらぁな(笑)」
雅吉はそう言ってカラカラと笑うと、身軽に縁側から飛び降りて、夜更けの町へと消えていった