第2章 紀州仇討ち編
―オマケの話し―
お智ちゃんのおめでたが発覚してから、数日が過ぎて
例の仇討ち騒動も、この忙しない江戸の町に暮らすあたしらにしたら
もう、随分前のことの様な気さえしていた
そんな時分
その、ちょっとした事件は起きた
その日
ちょいと野暮用をしていたお陰で晩飯の支度が遅くなっていたのだけれど
そんな日に限って家にいやがる雅吉は
何にもしないでゴロゴロと居間に寝転んで腹が減ったから早くしてくれと騒いでいた
雅吉「おぉい、にの江ぇ!腹ぁ減ったぞぉ!
飯ぁまだかぃ!!」
にの江「ウルサいねぇこの穀潰しがっ!そんなに腹が減ったならその辺の草でもかじってなッ(怒)」
雅吉「ん~?草ぁ?………どれどれ」
にの江「ちょいとアンタ何やって…」
─ガッタン
お智「にの江姉さぁああん////」
あたしの言った事を真に受けた雅吉が、庭の雑草を毟って口に運ぼうとしたその時
屋敷の戸が勢い良く開いて、涙声の叫びが聞こえた
にの江「えっ…?」
(お智ちゃん…!?)
もう夕刻だって言うのに、身重のお智ちゃんの、しかも泣いているらしい声が玄関から聞こえて
あたしは、慌てて声の方へすっ飛んで行った
にの江「お智ちゃん!いったいどうしたって言うんだぃ、こんな時分に…」
お智「にの江姉さぁああ~ん
ふぇええ~~ん////」
お智ちゃんは駆け寄ったあたしに抱きつくと、問いには答えずにわんわんと声を上げて泣き出した
にの江「全く、どうしたって言うだぃ、そんなに泣いて…お腹の子に障るじゃないのさ」
お智「えぐっ……だって、だって、……ふぇっ………ふあぁああん/////」
にの江「困ったね………取り敢えずお上がり?」
あたしは、泣きじゃくるお智ちゃんをあやす様に背中を擦りながら
お智ちゃんを抱きかかえる様にして居間へ向かった