第2章 紀州仇討ち編
にの江「おやおや、またお揃いで
今日はどうしたんだぃ?」
あたしは仲良く手を繋いで玄関先に立っている、翔吾さんとお智ちゃんに声を掛けた
翔吾「へぇ、ちょいとそこいらを通りかかったもんで、ついでに挨拶をして行こうと立ち寄ったんですがね?」
翔吾さんは言いながら、懐から手紙を取り出した
翔吾「丁度其処で幼なじみの飛脚の信五ちゃんに呼び止められましてね?
ソイツが、翔ちゃん蜩の宿に行くならコイツをついでに届けておくれょなんて横着を言いまして…」
にの江「手紙かい?…誰だろうね…」
翔吾さんから手紙を受け取ると、ソレは大倉さんからのものだった
にの江「あら、大倉さんからだょ
あんたへの手紙じゃあないかい?」
手紙を雅吉に見せると、雅吉は面倒くさそうに懐に手を突っ込んで言った
雅吉「んん~?にの江、代わりに読んでくれぃ!俺ぁ、字は苦手だ!」
にの江「……全く、本当に世話の焼ける人だょ(苦笑)」
あたしは文句を言いながら、手紙を広げた
にの江「えっと、なになに?
前略
皆様お変わりは御座いませんか
先だっては皆様の御尽力を得て、無事仇討ちの本懐を果たし
胸を張って帰郷する事が出来ました
つきましてはお礼にと、皆様を紀州の道場にご招待致たそうと思ったので御座いますが
わざわざご足労を頂くのも忍びない
いっそ、この際江戸に道場を構えようと思い立ちました次第で
…と言うのは建て前で
実を申せば、国へ仇討ちを果たして戻った拙者に
兄嫁を嫁に貰って家督を継げと家の者やら周りの者がしつこく申すものですから…
そんな訳で、江戸へ参るコトに致しました
その際はまた、ひとつ宜しくお願い申し上げます
早々」