第2章 紀州仇討ち編
雅吉「いやぁ、参ったなぁ」
部屋にあたしと二人きりになった雅吉は、自分の足を凝視して固まるあたしに笑いながら言った
雅吉「ひでぇ引っ掻き傷だろぅ?
野良猫の野郎をからかったら返り討ちにあってよぅ!」
にの江「……そうかぃ」
あたしはつっと立ち上がると薬箱から練り薬を出した
にの江「……放っておいて悪くしたらいけないからね……足をお出し」
雅吉「………ん」
雅吉はあたしに言われると素直に頷き、足をあたしの方に投げ出して座った
にの江「………」
あたしはその、潤之助さんの足に付いていた擦り傷と全く同じ擦り傷に、黙って塗り薬を塗った
雅吉「……ありがとょ」
薬を塗り終えたあたしを、雅吉がそっと抱き寄せる
優しい雅吉の腕に包まれて、強張っていた体の力が抜け行く
同時に、ずっと堪えていた涙が溢れ出した
にの江「………怖かった///」
雅吉「うん」
にの江「………怖かったんだから///」
雅吉「うん」
にの江「………ホントに、怖かっ…////」
ポロポロと涙を零しながら「怖かった」と繰り返すあたしの唇を
雅吉の暖かい唇が、そっと塞いだ
雅吉「……なぁ、にの江よぅ……これだけは覚えときな」
雅吉はあたしを胸にしっかりと抱き締めながら囁いた
雅吉「…お前が何時何処にいても、何をしててもょ…
…どんだけ遠くに居たとしても、何時でも俺が見守ってるってコトをなぁ…
…俺ぁ、例えこの身が死んで滅んでも、化けて出てでもお前を守ってみせるからよぅ…
………
……にの江……
………愛してるぜ」