第2章 紀州仇討ち編
潤之助「貴殿が大倉殿か」
潤之助さんが、すっと正座をして大倉さんの前に座った
大倉「はい、そうですが……貴方は?」
潤之助「拙者は、智子姫の御実家たる御家の家臣で、松本と申します」
大倉「松本殿…何処かで聞いたような…」
潤之助「貴殿の藩の生田とは、懇意に致しておりました」
大倉「!!…生田のッ…!!」
生田と聞いて大倉さんの目つきが変わる
にの江「大倉さん、落ち着いて下さいな
…ところで、うちの馬鹿亭主は何処だぃ?」
さっきから家の中の様子を窺っているのだが
どうも、雅吉の居る気配がしない
大倉「それが、拙者にもさっぱり…」
にの江「どう言うことだぃ?あんたら一緒じゃあなかったのかぃ?」
大倉「いえ、一緒だったのですが
二人で生田の行方を捜していた途中立ち寄った居酒屋の親父が、生田らしき男とお侍様が先日来ていたと言いまして
それで、そのお侍様の風貌を聞いた相葉さんが急に、お前、宿の居間で茶でも飲んで休んでろと言い出して…」
にの江「……で、言い付け通り茶を飲んでたのかぃ?」
大倉「はぁ」
(素直と言うか、純朴と言うか…(苦笑))
潤之助「その侍とは拙者の事であろう」
潤之助さんは渋みがかった凛々しい顔を更に渋くして腕組みをした
潤之助「生田が雅吉殿に復讐するためにこの江戸に舞い戻ったと聞いて、拙者も色々調べていたのだが…
…まさか、生田が国元でお目付役を斬って逃げてきたとは…」
潤之助さんは腕を解くと、畳に手を着いて頭を下げた
潤之助「この通りだ、大倉殿
ヤツを赦してやってくれ」
大倉「な、なんと!」
潤之助「…コトの発端は、殿様方の下らん賭事遊びが原因なのだ…」
大倉「な、なんですと…?」
潤之助「……実は」
潤之助さんはゆっくり顔を上げると、これまでの経緯を語り始めた