第2章 紀州仇討ち編
生田「な……んだと…!?」
にの江「……ほら、おやり」
あたしは刀の先を自らの喉仏に当てた
潤之助「にのっ…にの江殿ッ!!(汗)」
それを見て、潤之助さんが焦った声を上げる
あたしは大丈夫だからとばかりに潤之助さんに目配せをして
生田さんの顔をじっと見詰めた
にの江「……本当に腐ってるなら……本当に武士を棄てるつもりなら……刀なんざとうに捨ててるはずさ
だけどあんたはソレを手放さなかった
刀は、武士の命だからね」
生田「………」
にの江「雅吉は……あの人はもう、武士じゃない……
……お殿様の賭事の道具にされる事に嫌気がさして、その道を棄てた男だ」
生田「…賭事…?」
潤之助「あの御前試合は、殿様方の賭事遊びだったのだよ…」
潤之助さんが、諭すように静かな口調で言った
潤之助「お前が殿様から受けた叱責は、言わば賭に負けた腹いせであろう……何とも、腹立たしい限りではあるが
どんな理不尽な仕打ちも涙を呑んで主君に尽くす……それが、家臣と言うものだ」
生田「………」
潤之助さんは、かつての友に、優しく寄り添うと
その手から刀を取り上げた
潤之助「……仏門にでも入るが良い……仇討ちの件は、拙者がなんとかケリをつけよう」
生田「……松本……俺は……」
潤之助「もう良い、生田……お前が悪い訳ではない」
生田「……くっ……」
泣き崩れる生田さんの肩を、軽く叩くと
潤之助さんは自分の羽織りを脱いであたしに掛けた