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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第2章 紀州仇討ち編






真新しいその痕に、男の口元がワナワナと震える



男「……なる程ねぇ……昨夜もお楽しみだったのかぃ」


にの江「………だったら、なんだってんだぃ」



あたしは雅吉が付けた痕を見せ付けるように、脚を上げた



にの江「あたしら夫婦なんだ!

何時なんどき何をしたって文句を言われる筋合いなんざなぃよ!」


男「…………ふっ………くっくっくっ…」



男は一瞬目を見開いて驚いた顔をした後

顔を伏せて笑い出した



にの江「何がおかしいんだぃ!」


男「…………気に入ったぜ」


にの江「え?」



男はニヤニヤ笑いながら顔を上げると、片手であたしの腕を押さえつけて、空いた片手であたしの顎を掴んだ



男「みてくれだけじゃねぇ……中身も気に入ったぜ……

……こいつぁたっぷり愉しめそうだ」


にの江「!!!………んぅッ////」



壁に押し付けられて、唇を奪われる



にの江「んーッ!!んんーッ!!!////」



唇を押し付けられて暴れるあたしを

男が床に組み敷く



にの江「んあぁっ!!////」



肌けた着物を、男が捲りあげる



にの江「ぃやっ……やめっ……///」


男「……そぉいやぁ、まだ名乗って無かったけなぁ」



怯えるあたしの体を男の手が這い回る



にの江「ゃっ………あぁっ////」



その手が、雅吉が付けた痕の辺で止まり

執拗に其処を撫で回わす


ぶるっと嫌な身震いが、全身を駆け抜ける


男はそんなあたしの様子を、ニヤつきながら眺めると

喉を唸らすように言った



生田「俺の名前は、生田籐馬

…お前の亭主に、地位も名誉も奪われた男だ」




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