• テキストサイズ

蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第2章 紀州仇討ち編






懐に突っ込まれていた男の手が、あたしに向かって伸びて来る



にの江「……!!///」



あたしは震える脚を奮い立たせて男の横を駆け抜けようとした


その瞬間

ドスっと言う鈍い音と共に、腹に激痛が走る



にの江「Σうぅッ///」



薄れていく視界の片隅に

男のニヤケた顔が微かに見えた












にの江「………ぅ……ぅう////」



お腹の痛みを伴って、俄に意識が浮上する



男「おぅ、眼が覚めたか」


にの江「!!!////」



目の前にさっきの男が居て、あたしは慌てて着物の裾を掻き合わせた


男はそれを見るとふんと鼻を鳴らして笑った



男「心配しなくても、まだ手は付けてねぇ………俺は、意識の無い女とやる趣味はねぇんでな」


にの江「………」



座ったまま後ろに下がると、すぐに背中が壁に当たる


小さな手明かりだけに照らされた暗い部屋に目が慣れて来て、辺りを見回すと

とても手入れがされているとは思えない、汚い小屋にいる事が解った


それが一体何処にある小屋なのかは、皆目見当が付かないけれど…



男「………さて、じゃあちょっと愉しませて貰おうか……にの江さんよ」


にの江「あっ…!!////」



狭い小屋の中に逃げ場などなく

あたしはアッサリ男の手に捕まった


暴れた拍子に着物の裾が肌けて内腿が露わになる



男「!!」



それを見た男が、あたしの両手首を掴んで拘束したまま、苦い顔をした



にの江「?………あっ/////」



見れば、何時の間に付けたのやら

昨夜雅吉が戯れ事で付けたらしい、朱い痕が付いていた




/ 286ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp