第2章 紀州仇討ち編
潤之助「…雅吉殿はご在宅か」
潤之助さんは、渋い顔のまま入って来て中を見回した
それを見て、翔吾さんがあたしの代わりに答える
翔吾「お出かけの様でござぃますよ?」
潤之助「そうですか…時に、二人揃って雅吉殿に挨拶に参ったのか?」
潤之助さんは、翔吾さんとお智ちゃんの顔を交互に見た
翔吾さんとお智ちゃんは顔を見合わすと、お智ちゃんが可愛く小首を傾げながら言った
お智「いぇ、それもあるのですが、昨日雅吉さんがご病気のお侍様を連れてらして…
それで、お薬をお持ちしたのです」
潤之助「病気のお侍…?それは一体…」
にの江「雅吉の古い知り合いなんだそうですょ」
困惑した様な顔の潤之助さんにそう言うと
潤之助さんは益々顰めっ面をした
潤之助「…その知り合いとはもしや…紀州の者では御座らぬか?」
にの江「えぇ、そうですけど……何故それを潤之助さんが?」
潤之助「……お智、用事は済んだのかぃ?」
潤之助さんはあたしの問いには答えずに、お智ちゃんの方を見た
お智「いえ、済んだと言うか、用事の御座いましたお二人がお留守でしたので…」
潤之助「ならば出直すが良かろう」
お智「………」
お智ちゃんは少し困った顔で翔吾さんを見た
翔吾さんは、お智ちゃんに微笑むと、あたしに包みを差し出した
翔吾「では、雅吉兄さんにはまた改めてご挨拶に伺います故
お出かけになられる位ならば、もう必要も無いかも知れませんが、お薬をお渡しして置きます
…念の為。」
にの江「そうかぃ?済まないねぇ」
翔吾さんは、あたしに薬の包みを渡すと、お智ちゃんの手を取って
「では、また」
と言って一礼して、可愛い新妻を脇に抱える様にして帰って行った