第2章 紀州仇討ち編
にの江「……じゃあ、あたしゃその馬鹿殿様に感謝しなきゃなんなぃね」
雅吉「ん?…どう言うこったぃ?」
あたしは雅吉の膝の上に寝転んだまま、腕を伸ばしてその頬に触れた
にの江「だってさ、そのお陰で……あんたみたいな馬鹿亭主の世話が出来るんだから」
雅吉「………そうだなぁ」
雅吉が、頬に置かれたあたしの手を掴んで、優しく微笑む
雅吉「捨てる神ありゃ拾う神ありったぁ、よく言ったもんだぜ……
……俺ぁ天下一の果報モンだな」
雅吉の大きな手が
すっぽりとあたしの手を包む
にの江「………」
武士が、剣を捨てると言うことが、どんなに辛く屈辱的なコトなのか
曲がりなりにも武家に生まれたあたしにも、少なからず解っていた
其処には、人には言いたくない理由があるのだろうと言うコトも…
…それを
ずっと隠して仕舞っておこうとした秘密を話してくれた
それが、あたしは嬉しくて……
にの江「……あんた」
あたしは雅吉が握った腕を引き寄せて、胸に抱え込んだ
雅吉が、胡座を掻いたままあたしの顔を覗き込む
雅吉「なんだぃ、にの江」
にの江「……ねぇ」
あたしは、滅多に出さないような甘えた声を出すと
チロッと雅吉の顔を上目遣いに見上げた
にの江「……明日、起きれなくなっても構わないから……」
雅吉「………」
雅吉は、優しく微笑んだまま、あたしの体を引き上げて、膝の上に抱えた
にの江「……起きれなくなんかするもんかね……大事に可愛がってやらぁな」
にの江「……ばか////」
そして
大きくて暖かい雅吉の体に包まれながら
甘く優しい夜が、更けて行った…