第2章 紀州仇討ち編
大倉「どうぞ、お上がり下さい」
雅吉「邪魔するぜぃ!」
大倉「おい、コイツを料理してくれ。後、酒を頼む」
屋敷に着くと、忠義は手伝いに来ていた門下生に魚を預けて居間へ俺を案内した
しばらく昔話に花を咲かせていると
先刻の魚が香ばしい匂いを漂わせて、酒と共に運ばれて来た
門弟「…あの、失礼ですが…相葉殿でいらっしゃいますよね?」
酒と魚を運んできた門下生が、俺の顔を伺って言った
雅吉「あぁ、そうだが?」
門弟「やっぱり!」
若い門下生が興奮して正座したまま前につんのめった
門弟「昔江戸に居た頃にお見かけした事があるのです!
何を隠そう私が剣の道を志したのは相葉殿の見事な剣裁きをお目にかけたからでして!!」
雅吉「………そうかい………」
俺はぼそりとそれだけ言うと、受け取った酒を無言で口に運んだ
門弟「相葉殿?如何されましたか?」
急に黙り込んだ俺を訝しげに見る門下生
忠義は俺のその様子を見て焦った様に言った
大倉「そ、そんな事よりお前、兄上は何処においでか知らぬか!」
門弟「大倉の旦那様でしたら、先程何やら騒ぎがあったとかで、町方の役人と出掛けられたようですが?」
大倉「騒ぎだと?それはまた…」
「忠義様ッ!大変で御座いますッ!!兄上様がっ!!」
騒ぎと聞いて忠義が首を傾げていたら
忠義の家の者らしき男が、血相を変えて飛び込んで来た
大倉「あ、兄上がどうかしたのかッ!?」
「それがッ……旦那様が生田に斬られたとの知らせがッ!!」