第2章 紀州仇討ち編
──一方その頃・江戸の町の片隅のとある居酒屋では…
潤之助「これは、生田ではないか!久しいな」
馴染みの居酒屋に顔を出した潤之助が、知った顔を見つけ声を掛ける
生田「……松本か」
生田と呼ばれた男は、紫色の着流しを袖を通さず肩から掛けて、呷るように酒を飲んでいる
潤之助「…生田、お前……どうしたのだ?
長い間見かけんと思ったら…」
旧友の変わりように戸惑う潤之助
それを横目で見て、生田は更に酒を呷る
生田「そりゃあ見かけんだろうょ。俺は江戸から国元に帰されてたんだからな」
潤之助「国元?紀州へか?…何故またそんな…」
生田「おい、親父!酒が無いぞ!面倒だから、4・5本纏めて持って来い!」
潤之助「生田…」
生田は乱暴に空になった徳利を置くと、ジロリと空を睨んだ
生田「………相葉の所為だ」
潤之助「………何?」
生田「……相葉雅之進……お前も知っておろう……馬鹿みたいに腕の立つあの野郎のお陰で俺は……」
潤之助「………」
生田の澱んだ目がギラリと光る
潤之助は静かにその隣に座った
潤之助「…何があったのかは知らんが、ろくな生活をしておらぬのだろう…
拙者で力になれるコトがあれば力を貸すぞ」
生田「ならば」
生田は居酒屋の親父が持って来た酒を徳利のまま浴びるように呑んだ
生田「ならば、相葉の所在を捜すのを手伝ってくれ……ヤツに、復讐して…
……地獄に、道連れにしてくれる」
潤之助「………」
生田「………」
そして、不穏な沈黙の中
夜が更けて行った…