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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第2章 紀州仇討ち編






にの江「…全く、帰って来るなり、なんだぃありゃ…」



雅吉が行ってしまった方を呆れて見ていたら、玄関の戸が開いた


──ガラガラ

お智「ごめん下さいまし。……あ、にの江姉さん!」


にの江「あら、お智ちゃん」



見れば、お智ちゃんが風呂敷を小脇に抱えて立っていた



にの江「良かった。お留守じゃなくて///」



お智ちゃんはそう言うと、自分の襟足につっと手を添えた

その仕草が、ヤケに色っぽい



(なんだかお智ちゃん、近頃は娘らしさが抜けて、すっかり女らしくなって来たねぇ(笑))



元々、並大抵の器量良しじゃなかったお智ちゃんは

翔吾さんと夫婦になってからこっち、益々綺麗になって色気まで出てきた



にの江「これじゃ、翔吾さんもおちおちしてらんなぃんじゃないかねぇ(笑)」


お智「え?///」


にの江「いえね、こっちの話しだょ(笑)」


お智「はぁ??」



可愛く小首を傾げるお智ちゃん

やっぱり一々色っぽい(笑)



にの江「そんなコトよりあたしに何か用事かい?」


お智「あぁ、そうでした////」



お智ちゃんは、小脇に抱えていた風呂敷を差し出した



お智「近頃、悪い風邪が流行っているから

旅宿のお客様で具合を悪くなさっている方もみえるだろうって、翔吾さんが…」


にの江「翔吾さんが?」


お智「ええ。

お宿で流行るといけないから、先にお薬を届けておくれって///」


にの江「そうかい、そりゃ有り難いねぇ。丁度そんな客をうちの馬鹿亭主が連れ帰ったトコさ(苦笑)」



あたしがそう言って風呂敷を受け取ると、お智ちゃん目を丸くして、ぱちくりと可愛く瞬きをした



お智「まぁ!雅吉さん、お帰りになったのですね////」




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