第2章 紀州仇討ち編
雅吉「おぉ~い、にの江!けえったぞ!!」
雅吉が突然紀州に行っちまってから、半月程が過ぎたある日
なんの前触れもなく、雅吉が帰って来た
…嫌な予感通りに、厄介事を連れて
にの江「なんだぃなんだぃ、騒々しいね!」
雅吉「なんだょにの江!それが久しぶりにけぇって来た亭主に言う台詞かぃっ!」
にの江「何が亭主だょ、このオタンコナス!どんだけ家を留守にしたと……
……おや?そちらさんは何方だぃ?」
よく見ると、雅吉の背中に寄りかかる様にして若い武士が立っていた
雅吉「おぉ!こいつぁ大倉忠義ってぇ紀州藩士の男だょ!ちょいと俺の昔馴染みでよぅ
…わりぃんだがにの江、翔の字を呼んじゃあくれねぇか?」
雅吉はそう言うと、自分の後ろに控えていた若者を脇を抱えるようにして縁台に座らせた
にの江「翔吾さんを?なんでまた…」
雅吉「んん?ちょいとコイツが長旅の途中で体を壊しちまってよぅ」
大倉「…せ、拙者の事ならお構いなく…」
若い武士は、縁台に座ったまま顔を上げた
青白い顔をしているモノの、なかなか涼しい顔の男前だ
雅吉「おめぇは喋るな、忠義の!病人は大人しく寝てなぃ!」
大倉「…し、しかし雅吉さん、拙者は一刻も早く…」
雅吉「良いから良いから、取り敢えずあがれゃ!」
雅吉はさっさと草鞋を脱ぐと
あたしに何の断りもなく、その大倉とか言う若者を家に上げた
にの江「ちょ、ちょいとお待ちょ雅吉!!」
雅吉「話は後でぃ!病人を寝かせてからなぁ!」
にの江「雅吉!!」
雅吉「心配しなくても、後で嫌って程可愛がってやらぁな!」
にの江「ば、馬鹿言うんじゃないょッ!!////」
にの江「あっはっはっはっはっ!!」
雅吉は大声で笑いながら、若者を伴って客室に入って行った