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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第6章 盗賊始末騒動編


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にの江「………え?」




思いもよらなかった雅吉の言葉に目を見張るあたし

そんなあたしの肩を抱いたまま、雅吉が優しく微笑みながら更に言った




雅吉「それによ、案外良い響きだとは思わねぇかぃ?

“二宮雅之進”、なんてさ


な、二宮の奥方様よ(笑)」




“二宮の奥方様”なんて呼ばれて、かあっと頬が熱くなる


あたしはそれを誤魔化す様に、自分の肩を抱く雅吉の胸を押してそっぽを向いた




にの江「何言ってんだぃ、ばか////」


雅吉「あっはっはっはっ!

こんな馬鹿で申し訳なぃがなぁ

侍姿に戻った事だしよ、俺を婿に貰ってやってくんねぇか?


そうしたらよ、お前と侑李と……二宮の家を、俺がキッチリ守ってやらぁ」


にの江「……お前さん///」




急に真面目になった雅吉の声に、逸らしていた顔を雅吉の方へ向けると


真剣そのものな視線と目があった




雅吉「にの江…………愛してるぜぃ」


にの江「なんだぃ、お前さんはそればっかだねぇ…………馬鹿の一つ覚えみたいに/////」




嬉しくて、照れくさくて


つい、悪態をついてしまうあたしを抱き締めて

雅吉が何時もの様に豪快に笑い出す




雅吉「あっはっはっはっ!

そんなもん、お前ぇを愛してるって事だけ覚えときゃあ、後は何忘れたって差し支えねぇんだから、構わねぇじゃねぇか(笑)」




あたしはそんな


ちょっと馬鹿で、何処までもお人好しで

…誰よりも頼りがいのある、愛しい人の手を


そっと、握り締めて言った




にの江「…………んとに、ばかなんだから………


……………




…………二宮の、旦那様は////」






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