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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第6章 盗賊始末騒動編


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にの江「ああ、お智ちゃんなら、朝早くに翔吾さんが迎えに来てとっくに帰りましたよ」


雅吉「はあ?翔の字のやつ、俺の報告を待たねぇでお智ちゃんを連れ帰りやがったのか!」


お智「何しろバカみたいに仲の良い夫婦だからねぇ

二晩きりったって、離れ離れだったのが相当寂しかったらしいわよ(笑)」




あたしがそう言って笑うと

雅吉は呆れた様な感心した様な、ちょっと複雑な顔をして呟いた




雅吉「ははあ……たった二晩でねぇ」


にの江「何処かの遊び人とは、大違いだよねぇ(笑)」




何だか解せないと言った感じで呟く雅吉に、ちょっと意地悪くそう言うと

雅吉が、あたしにスッと寄り添い肩を抱き


甘い声で囁いた




雅吉「………もう、遊び人じゃあねぇぜ」




あたしの肩を抱き寄せて、ちょっと着物を摘んでみせる雅吉


相変わらずその仕草は遊び人のソレだったけれど

…しっくり決まっている武家姿に、あたしは堪え切れずにぼそりと本音を口にした




にの江「うん………よく、似合ってるょ///」




恥ずかしくて、雅吉の胸に顔を押し付けるあたし


そのあたしを、雅吉が柔らかく抱き締めて、ボソボソと話し始めた




雅吉「……実はぁな……潤之助の旦那が協力してくれたのにゃあ、ちいと訳があってよ」


にの江「……訳?」




珍しく照れ臭そうに話す雅吉の様子を不思議に思って、その腕の中で顔を上げると


雅吉が、照れ笑いをしながら言った




雅吉「ああ……実は、丁度、お智ちゃんがうちに来た日によ

潤之助の旦那が忠義の道場に来てなぁ

んで、その旦那から、ぽんちゃんに剣術の指南をしてくれねぇかって頼まれたんだよ」




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