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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第6章 盗賊始末騒動編


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雅吉「…………で、潤之助の旦那と忠義と俺の三人で、盗賊の野郎共をこてんぱんに痛めつけた後

岡っ引きに引き渡して、一件落着、って訳さ」




雅吉が撒いた、“夜通しで大名家の警護をする”と言う餌に食い付いた盗賊共をやっつけた翌朝

大名家の下屋敷に泊まっていたあたしの元に、雅吉が事の顛末を知らせにやって来た


あたしは、すっかり立派な武家姿になっている雅吉を前にして、ちょっと落ち着かない気持ちになっていたのだけれど


でも

そんな事を気付かれては、こっぱずかしくて適わないんで、あたしはそれを誤魔化す様に、ちょっと話題を変えた




にの江「ふぅん………でも、潤之助さんと大倉さんの女装姿はなかなかの見物だったわよねぇ(笑)」(←大名家ですり替わる際に、女装した二人に化粧をした張本人(笑))


雅吉「まぁなぁ、図体のでけぇのが、玉に瑕だったけどよ(笑)」


にの江「ふふふ……まあ、確かにねぇ、お二人とも、体格が良くてらっしゃるから(笑)」




自分を誤魔化す為に話題にした事ではあったものの

昨日の二人の見事な女装姿(笑)を思い出し、思わず笑いが込み上げる




にの江「ふふふ……でも、大倉さんは兎も角、よく潤之助さんが女装でお智ちゃんとあたしの身代わりを引き受けてくれたもんだねぇ

あんた、どうやって潤之助さんを説得したんだぃ?」




男気の塊(笑)みたいな潤之助さんが、いくら盗賊をとっちめる為とは言え


何故、女装して、化粧まで施されるのを(←それはあなたが勝手にやったんでしょうが(笑))黙って受け入れたんだろうと首を傾げる




雅吉「ん?…うん、まあなぁ」



そんなあたしを見て、雅吉は言葉を濁すと、誤魔化す様にキョロキョロと部屋を見回して言った




雅吉「ところで、お智ちゃんはどうしたんだぃ?姿が見えねぇが」



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