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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第6章 盗賊始末騒動編


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にの江「………え?」




剣の正体を言い当てられて驚くあたしを見ながら

お智ちゃんが、相変わらず遠慮がちにしながら話を続けた




お智「……昔、私がまだ幼くて……にの江姉さんのお父上がご存命でおられた頃

お屋敷で、幾度となくお父上のお姿を拝見した事が御座いました


…その折りに、お父上のお腰に携えられていた大小を見かけて…

…美しい装飾が施されたその剣を見て、子供心に、あれは大層な品なのだろうなぁと思ったのを、今でも良く覚えております」


にの江「…………」


お智「……その、お父上がお持ちだった大小が……雅吉さんがお持ちでした大小と、そっくり同じ物だったように思いましたもので……」


にの江「……………全く、大名家の姫君ってのは、記憶力も庶民とは違うもんなのかしらねぇ(苦笑)」




あたしは、しらを切るのを諦めて苦笑いすると

湯飲みを卓袱台の上に置いた




お智「では、やはりそうなのですか?」


にの江「ああ、お智ちゃんが思った通りさ

あれは、あたしの父上が持っていた、二宮家に代々伝わる家宝の剣さ」


お智「では、雅吉さんは二宮家を継がれるので御座いますね!////」


にの江「…………は?」




急に“二宮家を継ぐ”なんて言うのを聞いて、ぽかんとするあたしの様子に気付かないのか

お智ちゃんは、嬉しそうに顔の前で手を合わせてニコニコと笑った




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