• テキストサイズ

蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第6章 盗賊始末騒動編


.




それから

無言のままで徐に箱の紐を解くと


ゆっくりと、桐の箱の蓋を開けた




雅吉「…………」




そのまま、無言のままで箱の中から剣を取り出す雅吉


そして、手に取った剣を、何かを確かめるようにゆっくりと鞘から引き抜いた




雅吉「…………ほぅ…………」




鞘から引き抜いき、姿を現した刃を見て、ため息とも吐息ともつかない声を漏らす雅吉


そして、しばらくの間、しげしげと刀を見詰めると、またため息混じりに呟いた




雅吉「……………こいつぁ…………銘刀だ


見て見ろ、この見事な波紋を………こりゃあ、よっぽどな名工の仕業だな」


にの江「………気に入ってくれたかぃ?」




惚れ惚れとした顔で剣を眺める雅吉に、あたしがそう訊ねると


雅吉は、刀を鞘に納めて、すっとそれを腰に差し


そして、あたしをグッと抱き寄せた




雅吉「気に入るも気に入らねぇもなぃさ…

…お前といい、この宝剣といい…俺なんざにゃあ勿体無い代物だょ」


にの江「………雅吉…////」


雅吉「……ありがとな、にの江……

……俺ぁ日本一の果報者だぜ」


にの江「……何調子の良いこと言ってやがんだぃ、……ばぁか////」




あたしが照れ隠しに“ばか”って言ったら

それを聞いた雅吉が、嬉しそうに目を細めて呟いた




雅吉「へへっ……んとにょ、お前って女は素直じゃなくて………可愛いなぁ(笑)」




.
/ 286ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp