第6章 盗賊始末騒動編
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それから、あたしは翔吾さんの所に子供らを預け、事情を翔吾さんに話した
最初、お智ちゃんが戻らないと聞いて翔吾さんはかなり難色を示したのだけれど
話を聞いた大女将に、ここはあたしと雅吉に任せた方が良いと渋る翔吾さんを言い含め
どうにかこうにか渋々納得した翔吾さんに、侑李のことを宜しく頼み
あたしは、そのまま真っ直ぐに宿へと帰った
にの江「………ただいま」
雅吉「よう、にの江!おけぇり」
宿に帰ると、雅吉が奥の部屋に寝転がって、呑気に豆を摘み食いしていた
あたしは、何時もと変わらないその姿にちょっと苦笑いしながら、その隣に腰を下ろした
にの江「お智ちゃんは、どうしてんだぃ?」
雅吉「ああ、今はぐっすり眠ってらぁ」
にの江「………そうかい」
雅吉「時に、にの江
例のモノはどうしたぃ、お前さん手ぶらじゃあねぇか」
にの江「………心配しなくても、ちゃんと用立てしてやるって言ったろ」
あたしはそう言うと、立ち上がり
そして、神棚に大切に仕舞っておいた桐の箱を取り出した
雅吉「………それは?」
にの江「……あたしの家の……
……二宮家の家宝の大小に御座います」
雅吉「……家宝の……」
にの江「………あんたは、あたしの亭主だからね
これは、あんたが受け継ぐのが道理ってモンだ」
雅吉「………………」
雅吉は、あたしが差し出した桐の箱を無言で受け取ると
しばらくの間、黙ってじっと箱を見つめていた
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