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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第6章 盗賊始末騒動編


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お智「……そう言う事情だったので御座いますか///」




お智ちゃんは、雅吉の話しを聞くと、少し安堵した様にため息をついて

自分の手を握ったあたしの手を、キュッと握り返した




にの江「そうと解ったら、早速お店にお帰りよお智ちゃん

あたしと雅吉が送って行ってあげるから…」


雅吉「いや、そいつぁどうかな

店にゃあ帰らねぇ方が良いんじゃねぇかなぁ」


お智「……え?」




事情が解って一件落着とばかりに、あたしがお智ちゃんを店まで送って行くと言ったら

雅吉が止した方が良いなんて言い出して


途端にお智ちゃんの顔が不安げに曇った




にの江「ちょいとあんた!なんで帰ったらいけないのさ!」




そんなお智ちゃんの様子を見て怒り出したあたしの肩を、相変わらず抱き寄せたままの雅吉が

抱いたあたしの肩をぽんぽんと叩きながら、呑気な声で言った




雅吉「まあまあ、そう目くじら立てて怒りなさんなょにの江よぅ

確かに、誤解は解けたかも知んねえけどょ、まだ強盗の奴の件は片付いてねぇんだ

このまま店に帰ぇす訳にも行くまいょ」


にの江「それは……じゃあ、誰か用心棒を……あ」




話している途中で、先刻の大倉さんの話を思い出したあたしが、大倉さんの名前を出そうとしたら

それを読んだ様に雅吉が言った




雅吉「忠義に頼むのはぁやぶさかだと思うぜぇ」


にの江「なんでさ!

そりゃあお前さんには及ばないだろうけど、大倉さんは一端の道場主だよ?

腕は確かなんじゃないのかぃ?」




大倉さんに用心棒を頼むのはやぶさかだなんて言う雅吉に、あたしが息巻いて食ってかかると

雅吉は相変わらず呑気に笑いながら答えた




雅吉「確かに腕ぁ確かだけどなぁ

アイツは修羅場を潜った経験が浅い

…いざ、斬ったはったの場面に出くわした時に、尻込みしちまうのは目に見えてるからな

忠義1人に任せるなぁ止めた方が良い」




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