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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第6章 盗賊始末騒動編


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雅吉「はあ、そりゃまた…厠へも行けないんじゃあそら難儀なことだなぁ」


翔吾「厠ッ!!そう厠ですよッ!!

厠へ行くって恋太郎と一緒に部屋を出たっきり戻って来なくてッ!!

どうしたんだかって心配してたらおっかさんが近頃物騒だしお智ちゃんは具合が良くないしで、安心してお産が出来ないだろうから

ややが産まれて盗賊の騒動が収まるまで実家へ帰した方が良いんじゃないかって自分らが話してたのを聞いて

もしかしたら何やら勘違いをして家を出ちまったんじゃないかって言うじゃないですかっ!

それで今、店の者は勿論、おっかさんとおとっさんも総出てお智ちゃんと恋太郎の行方を探してるんですよッ!!(泣)」




翔の字は、息も付かずに一気に事情を話し倒すと

ぜーぜーと肩で息をしてうなだれた




翔吾「……そ、そう言う……訳なので、御座います…(泣)」


雅吉「ははぁ…なる程…」



大倉「おや?相葉さんと…若旦那さん!

こんな所で一体何を…?」




そうしたらょ


翔の字が、勝手にベラベラと話した事情を聞いて

何だかてぇへんな事になってやがるなぁと思っていた所に、丁度うちから道場へ戻る途中だった忠義がやって来て…









雅吉「……んでょ

にの江の伝言と、お智ちゃんがうちに居る事を聞いた、って訳なんだが

翔の字の奴ぁ最初、一緒にうちにお智ちゃんを迎えに行くって聞かなかったんだけどょ

店のモンやらおとっつぁんおっかつぁんにお智ちゃんが無事だって事を知らせてやらなけりゃなんねぇだろうって俺が言い含めて

んで、翔の字は一旦店に帰って皆にお智ちゃんの無事を伝えて、店で待っている事になったんだょ」




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