第6章 盗賊始末騒動編
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にの江「…………さて、用心棒さんたちが見張りに飽きる前に、離縁だなんて縁起でもないことを言った理由を聞かせてもらいましょうかね
…話せるかい?」
子供らが庭に出て行ってから、お智ちゃんに布団をかけ直してやりながらあたしがそう切り出すと
お智ちゃんは、青い顔のまま、小さく頷いて話し始めた
お智「………実は、私………聞いてしまったんです………
………お父様とお母様が、私を、実家に………実家に返した方が、良いのではないか、って………話しておられるのを」
にの江「何だって!?
実家に返すってそりゃ…」
お智「………全ては、私が薬種問屋の若女将でありながら、こんなに情けなくやせ細って、病人の様な有り様になってしまったのがいけないのです…////」
お智ちゃんはそう言ってうるうると瞳を揺らすと
事の発端を話し始めた
実を申しますと…にの江姉さんはご存知だとは思いますが
私は、臨月も間近だと言うのに、何時までも悪阻が治まらず
ろくにご飯が頂けなくて、情けない事に痩せ細って弱り、まるで大病を患った病人の様な有り様になってしまっておりました
そんな私を心配した翔吾さんは
近頃は特に、片時も私の傍から離れずに、それはそれは甲斐甲斐しく私のお世話をして下さっておいでだったのですが
今朝は、どうしても翔吾さんでなければ用が足りない大事な用事があるからと、半ば強制的にお母様に連れ出されて、朝早くから出掛けておいで御座いました
それで
朝餉の刻になっても戻られなかったので、私は恋太郎がお腹を空かせてはいけないからと、先に恋太郎に朝餉を食べさせていたのですが…
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